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暇な公認会計士が、監査や身近な会計、その他自由に意見を述べています。

会計監査の年間スケジュールを教えてください

質問

会計監査を初めて受けることになりましたが、どのくらいの頻度で監査が行われるのかスケジュールがよくわかりません。どのようなスケジュールで実施されるのでしょうか?

回答

年間監査スケジュールは、企業の規模や複雑性によって異なります。画一的なものはないため、会計監査の開始時に担当する公認会計士からスケジュール表を入手することが望ましいです。

監査に要する日数は企業の規模や複雑性によって異なる

監査日数について明確に定める法令はなく、各企業の規模や複雑性によって決まります。一般論として、以下の傾向があります。

  • 規模が大きい、複雑な取引が多い → 監査日数は増加する
  • 規模が小さい、複雑な取引は少ない → 監査人数は減少する。

製造業を例に「規模」を考えてみると、本社工場以外に拠点がない企業よりも、国内に複数の工場を有していたり、海外展開もしているような企業の方が日数は増加します。

3月決算会社の監査スケジュール例

一年間の監査スケジュールの例
  1. 前年度の決算が株主総会等で確定した後に当年度の監査契約を締結することが多いです。
  2. 初めての監査の場合期首残高(前年度の貸借対照表の数値)の検証手続が行われます。
  3. 監査の早い段階で前年度の財務諸表数値等を基礎に監査計画を策定します。監査の実施範囲(グループ内の重要な会社の特定、重要な勘定科目の特定等)、重要性の基準値、監査チームメンバーの決定、監査実施時期の決定等が行われます。また、並行して重要な虚偽表示リスク(不正リスク、特別な検討を必要とするリスク)の識別が行われます。
  4. 監査計画は見直しが必要かどうか常に検討します。想定していなかった重要な取引(他社の買収や重要な資産の取得・売却等)や新規ビジネスの開始(既存ビジネスからの撤退)、内部統制の不備などがある場合に、監査計画の修正やリスク評価の修正が必要かどうかを判断しています。
  5. 内部統制システムの理解、及び業務プロセスレベルの内部統制が整備され、業務に適用されているかを検討します。決算時のみに行われる内部統制については、前年度の状況を質問や資料の閲覧により確かめることがあります。
  6. 内部統制が実際に運用されているかどうか検討をします。
  7. 決算時にのみ行われる内部統制は、決算日後に運用状況を検討します。
  8. 現金などの実査、棚卸の立会は期末日近くに行われることが多いです。
  9. 銀行や証券会社、売掛金や買掛金等の債権債務の確認は期末日近くに行われます。差異調整(確認の結果生じた差異に関する説明)に時間を要することがあります。
  10. 売上や仕入等の損益項目が正しく計上されていることを確かめるための手続は決算日以前(期中監査)に行われることが多いです(決算日後にまとめて行うよりも、実施時期をバラした方が効率的なため)。また、企業結合等の重要な取引については取引の実行前後に会計処理を検討することがあります。
  11. 決算日後のいわゆる「期末監査」として、実査・立会・確認、分析や資料の閲覧等が行われます。
  12. 監査報告書発行にあたり、監査が適切に行われたか審査を受けます。審査を含めて全ての手続が終了した後に監査報告書が提出されます。

大体の日数は監査報酬の見積書、監査契約書の日数を見ればわかる

日本公認会計士協会は監査契約書のひな形を公表しています。

jicpa.or.jp

各契約書では「監査見積時間数」の区分があり、ここで年間何時間程度の監査をするかが記載されます。この時間数は日数で記載されることもあります。

監査契約に先立ち、担当公認会計士から「見積書」の提出がある場合には見積書に監査予定時間数が記載されているかと思います。見積書に統一のフォームがないことから担当する公認会計士により記載内容はまちまちですが、単に年間の予定時間だけ記載されているものから、実施する作業に分けて時間数を明らかにしているものもあります。さらに詳しいものですと担当者の単価も明示しているものもあります。

契約書・見積書の時間数は「一人1日7時間」とすることが多いです。時間数を7で割ることで全体の日数が概算できます。

監査スケジュールを入手しましょう

監査契約書・見積書の日数は「概算」であり実際の作業スケジュールによっては増加・減少する可能性が高いです。より正確な日数を知るために「監査スケジュール」を入手し、最低限以下の事項を把握すべきです。

  • 往査日(又は往査をせず事務所等で作業をする日)
  • 往査人数
  • 実施する監査の内容

監査スケジュールの例

監査スケジュールは担当する公認会計士が事前に(監査契約の前後で)作成している場合もありますが、監査初年度の場合には関係部署の都合を調整した後で作成することもあります。いずれにせよ、公認会計士から監査スケジュールを入手し、いつ・どこで・どのような監査が行われるのか把握しておくべきでしょう。