input & output

暇な公認会計士が、監査や身近な会計、その他自由に意見を述べています。

残高確認とは何ですか?(債権債務編)

質問

公認会計士と年間監査スケジュールを調整する中で「期末は取引先に残高確認を行います」と話がありました。具体的にどのようなことをするのでしょうか?

回答

残高確認とは、①監査人から確認先に回答を受けたい事項を列挙したお手紙(確認状)を出し、確認先から監査人に直接回答を行う(回答を記載した確認状を監査人に直接返送する)手続です。

取引先に対しては、売掛金や未収金などの債権、買掛金や未払金などの債務の残高を問い合わせます。

確認(残高確認)とは何か

確認(残高確認)とは、監査人と確認先が直接お手紙をやり取りする手続です。

紙媒体、電子媒体又はその他の媒体により、監査人が確認の相手先である第三者(確認回答者)から文書による回答を直接入手する監査手続をいう。

監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」|日本公認会計士協会、ハイライトは筆者追加

定義にあるとおり、直接回答を受けることがポイントとなります。例えば、確認先から会社(監査を受けている会社)に返送し会社から監査法人に提出された回答は、確認の回答とはなりません。

会社が対応すること

主に次の対応が必要となります。

  1. 債権債務の相手先ごとの残高の一覧(補助元帳や補助残高明細など)を監査人に提示する。
  2. 監査人から指定を受けた相手先に対する確認状の送り先を調べる。
  3. 確認状を作成する。確認状のフォームは監査人から入手する。
    • 送り先の住所を記入
    • 当社の住所・社名・代表者名を記入し、必要に応じて社印を押印する。
    • 確認項目(売掛金、買掛金など)と確認額(当社の認識残高)を記載する。債務については残高を記載しないこともあるので監査人の指示に従う。
  4. 必要に応じて相手先ごとの詳細な残高明細(店舗・営業所ごと、月毎等、相手先が回答しやすいような参考資料)を作成する。
  5. 発送枚数×2枚(往信・返信用)の切手を用意する。
  6. 回収した確認状に差異(確認額と回答額の相違)がある場合には差異調整を行なう

差異調整には想定よりも多くの時間(と労力)を要する場合があります。別記事にまとめていますのでそちらもご参照ください。

input-and-output.hatenablog.com

なお、前述の通り相手先からの回答は監査人に直接返送されるため、会社はどのような記載をされているか見ることができません。ただ、差異調整で必要な場合など、監査人から確認状のコピーをもらうことは可能です。監査人から拒否されることは少ないと思いますので必要に応じて監査人から入手してください。

債権債務残高確認書の様式

債権債務の確認状は、各監査法人(又は会計事務所)で独自のフォームを利用していることが多いです。日本公認会計士協会JICPA)でも一般の会社用のフォームは公表されていませんが、学校法人監査向けの研究報告として様式例が公表されています。

学校法人監査用の債権債務確認状の例(リンク先「別紙3」)

リンク先の様式では2ページに分かれていますが、1ページにギュッとまとめることが多いように思います。

債権債務確認状の確認項目

債権債務確認状の確認項目は監査人が指定します。「債権」「債務」に分類されるものであれば基本的に何でも含まれます。

債権:売掛金、未収金、前渡金、敷金、保証金……などなど

債務:買掛金、未払金、前受金、預り金、預り保証金……などなど

一方で、前払費用や未払費用等の経過勘定については確認対象としないことが多いです。経過勘定=当社の損益計算書(PL)を正しくするための調整であり、債権債務のようにお互いの認識額が一致するとは限らないためです。