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特別な検討を必要とするリスクとは何ですか?

質問

当社の監査役に対して公認会計士が監査計画説明をする中で、特別な検討を必要とするリスクという言葉が出てきました。特別な検討を必要とするリスクとはどのような意味を持つのでしょうか?

回答

特別な検討を必要とするリスクとは次のものを指します。
①特に重要な固有リスク(発生可能性が高く、影響の度合いも大きい固有リスク)
②監基報の中で特別な検討を必要とするリスクとして扱うこととされた重要な虚偽表示リスク

特別な検討を必要とするリスクに対しては、
・内部統制を識別し、整備状況・運用状況の評価を行うこと、
・そのリスクに個別に対応する実証手続を実施すること
が求められています。

特別な検討を必要とするリスク=特に重要な固有リスク&監基報で決められているリスク

特別な検討を必要とするリスクとは、①特に重要な固有リスク②監査基準報告書の中で特別な検討を必要とするリスクとして取り扱うこととされた重要な虚偽表示リスクのことを言います。

特に重要な固有リスク

固有リスクの評価では、発生可能性と影響の度合いを考慮し重要な虚偽表示リスクとなるか判定を行います。この過程において、特に発生可能性が高くかつ影響の度合いも大きいリスクを特別な検討を必要とするリスクと判定します。

監査基準報告書(序)監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語|日本公認会計士協会
監基報で特別な検討を必要とするリスクとして取り扱うこととされている重要な虚偽表示リスク

リスク評価は基本的に監査人の主観的判断によりますが、以下のリスクについては監基報で特別な検討を必要とするリスクとすることとされています。

  • 不正による重要な虚偽表示リスク(監基報240 26項)
  • 企業の通常の取引過程から外れた関連当事者との重要な取引(監基報550 17項)
  • 経営者による内部統制を無効化するリスク(監基報240 30項)

経営者による内部統制を無効化するリスクは、監基報240第30項において全ての企業に存在するとされており、かつ不正による重要な虚偽表示リスクであるとされていることから、特別な検討を必要とするリスクである旨が明記されています。

特別な検討を必要とするリスクに対しては、個別に対応する監査手続が実施される

各監査事務所では、各勘定科目等*1に対して実施する標準的な実証手続を定めています。一般的なリスク*2に対しては、標準的な実証手続を実施すれば対応できるように設計していることが多いと思います。

そのような標準的な実証手続を実施した上で、特別な検討を必要とするリスクに対してはリスクに個別に対応する監査手続を実施することが求められており、多くの場合識別した特別な検討を必要とするリスクに対してオーダーメイドで手続を設計します

リスクに個別に対応する監査手続においては、証拠力の高い監査証拠を入手するために、第三者に対する確認や、監査人が現物*3を実査・閲覧したり、現場の視察を行います。特にリスクが高いと監査人が判断する場合には、時期を指定せず(抜き打ちで)実施されることもあります

会社側としては、特別な検討を必要とするリスクに対して実施される手続を想定した上で、監査がスケジュール通りに進むよう対応する必要があります。実施予定の監査手続の概要を、監査人との日々のコミュニケーションの中で確認できると良いと思います。

*1:正確には「取引種類、勘定残高及び注記事項」とすべきですが、長いのでこのような表現にしています

*2:重要な虚偽表示リスクと表記した方が正しいとは思いますが、こちらも長いので簡便的に記載しています。

*3:特に重要な契約書等の資料に関して、写しではなく書面の現物、電子署名の付された電子データを入手することも含みます。