会計の引継ぎのときに、「取引を帳簿に記録して」っていうことを何度も言われたんだ・・・。
うんうん。何か引っかかることあったの?
そのときは疑問に思わなかったのだけど、そもそも取引って何のこと?モノを売ったり買ったりするイメージだけど、それであってる?
意外と本質的な所に疑問を持つのね。ちょっとわかりにくいかもしれないけれど、仕訳の対象になる事象を取引というの。
何それわかりにくい。豚でもわかるように教えて。
でしょ?もう少しわかりやすくいうと、
PTAの収支会計って単式簿記で資金の動きを把握したいわけじゃない。
だから、資金が増えたり減ったりすること(資金の動き)を取引というの。
つまり、現金や銀行預金の入金・出金が取引になるわ。
なるほどね。要するに現金や預金の入出金を見つけて帳簿に記録するってことであってる?
そのとおり!その理解で収支会計の基礎はバッチリね。
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会計用語の「取引」とは記録したいコトの動きのこと
一般的に「取引」とは、何かモノを売ったり買ったりすることを言うと思います。自分が何かを売る相手、反対に相手から何かを買うような場合に、その相手のことを取引先と言います。
簿記・会計の世界では、「取引」をもう少し広い意味で考えていて、仕訳の対象となる事象を取引といいます。具体的には、PTAの収支会計であれば資金の動き(増加・減少)が取引となります*1。参考までに、複式簿記では資産・負債・純資産・収益・費用の動きが取引となります。
収支会計の場合は「資金」の動きが取引になる
収支会計の目的は、資金の動きを記録し、会計期間における資金の動きを取りまとめて関係者に報告することにあります。この目的を達成するために、資金の動きを取引として見つけ、帳簿に記録する必要があります。資金が増えたら収入、資金が減少したら支出となります
反対に、資金の動きが無い場合には帳簿への記録は必要ありません。資金の動きを報告することが目的なのですから、当然動きがない場合には報告すべきことがないということになります。
さて、ここまで現金や預金という言葉ではなく、あえて「資金」という言葉を使っていることには意味があります。なぜなら、収支会計における「資金」とは現金・預金に限らないからです。次の事例をもとに、資金の範囲が異なる場合に収支がどのように変わるかみていきましょう
設例:当年度の会計期間は2024年4月1日〜2025年3月31日です。当年度の収支計算書を示してください。
資金の範囲が【現金・預金】の場合
資金の範囲が【現金・預金】の場合には、現金・預金の動きを記録します。つまり、現金・預金が増えたら収入、反対に減ったら支出となります。
設例を見ると、次の通り現金が動いていることがわかります。
- 会費の徴収により198,000円現金が増えた(収入:198,000円)
これ以外に現金・預金の動きはありません。会費で未収となった2,000円は現金・預金の動きに影響しませんし、会長の経費についてもPTAの現金が動くのは次年度であり当年度の現金は動きません。
この場合に収支計算書を作ると次のようになります。会費収入は198,000円、消耗品費は0円で、次年度繰越金は198,000円となります。
資金の範囲が【現金・預金・未収入金・未払金】の場合
それでは資金の範囲を拡大してみましょう。資金の範囲を【現金・預金・未収入金・未払金】とした場合には、この4項目の増加、減少を記録することとなります*3。
- 会費の徴収により198,000円現金が増えた(収入:198,000円)
- 会費の徴収ができなかった分、2,000円未収入金が増えた(収入:2,000円)
- 立替経費が出た3月20日時点で経費精算をする義務が生じるため、5,000円未払金が増えた(支出:5,000円)
ちょっとややこしいですが、未収入金の増加は今後現金が増えるので収入、未払金の増加は今後現金が減る(立替経費を精算するときに現金が減る)ので支出となります。
この場合に収支計算書を作ると、会費収入は200,000円(198,000円+2,000円)、消耗品費は5,000円で、次年度繰越金は195,000円となります。
資金の範囲が変わることで収入・支出、及びそこから算出される次年度繰越金が変わることがわかったかと思います。資金の範囲は収支会計を行うための前提であるため、PTA規約で明記することが望ましいです。
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資金の中での動きは仕訳の対象にならない(例:現金→預金)
最後に資金の範囲に含めた科目内の動きについて書いておきます。
会費を現金で受け取ったあと、そのまま現金で保管はせずに銀行に預けることが通常だと思います。
input-and-output.hatenablog.com
一見すると、「現金の減少」(支出)と「預金の増加」(収入)があるため取引であり仕訳の必要があるのではないか?と疑問を持つかもしれません。
この点、一般にPTAの収支会計で用いる単式簿記では資金の中の動きについては仕訳を行いません。資金というまとまった単位で増加・減少を記録することが通常です。
仮に資金の中の動きを収入・支出として記録すると、収支計算書が読みにくくなってしまいますし、収入合計・支出合計が意味もなく増えてしまいます。こういう事態を避けるために、資金の中の動きについては仕訳を行いません。
なお、収支会計に複式簿記を利用していて、現金勘定・預金勘定を設定している場合には次のような仕訳をすることとなります。
(借方)預金 5,000円 /(貸方)現金 5,000円 |
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今回の記事ではPTA会計担当者の基礎知識として、仕訳の対象となる「取引」について解説しました。この記事に関するご質問・お問い合わせがございましたら、コメント欄かお問合せフォームよりご連絡いただけると嬉しいです。
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*1:PTAの収支会計=単式簿記を前提としています。以下同様です。
*2:なお書きについては下記参照
input-and-output.hatenablog.com
*3:資金の範囲は勝手に変えて良いものではありません。担当者の好みで変えてしまっては毎期記録することが変わってしまいます。資金の範囲はPTA規約に明記し、変更をする場合には総会で規約変更の決議を行うべきです。