PTAで収入や支出を記録するときに「勘定科目」ってものを使うらしいんだけど、何か知ってる?ボールペン、とかコーヒー代じゃあダメなの?
収入や支出を記録するのは、1年に1度収入や支出の内容をPTA会員に報告することが目的なの。そのときにボールペン代とかコーヒー代みたいに書くと、項目が多くなりすぎて読みにくいわ。そこで、内容や使う目的が似たようなものをまとめるために「勘定科目」という見出し付きの箱を用意して、金額を集計するの。
なるほど!部屋中おもちゃで散らばっているとうんざりするけど、お兄ちゃんのはこっちの箱、妹ちゃんのはこっちの箱、って分けるとスッキリするし、それぞれどれくらいおもちゃがあるかわかる、みたいな感じね。
そんな感じね。ちなみにPTAの収支会計の場合は、勘定科目を自分たちで自由に決められるわ。どんな名前をつけても良いし、どの支出をどの勘定科目に分類してもOKなの。
へー。でもそれじゃあ「どんな支出」を「どんな勘定科目」にするかも自由なの?それだと判断に迷っちゃいそう。
会計の基本的なルールとして「継続性の原則」と「明瞭性の原則」ってものがあるわ。継続性の原則は、特に理由がない限りは過去と同じように処理しましょうねってルールね。明瞭性の原則は、わかりやすく表示をしましょうねってルールよ。いくら自由だからってテキトーな名称(費用A、収入B)をつけると読み手はわからず決算報告が適切になされないわ。
それと、会計担当者が自由に勘定科目を増やしたり、減らしたり、名前を変えたりすると何が何だかわからなくなっちゃうから、PTA規約や会計ルールの中で勘定科目を指定したり、この支出はこの勘定科目!っているルールを作っておくことが必要ね。
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勘定科目は取引をまとめるための見出し付きの箱
どこかで経理の仕事をしたことがあるとか、高校・大学で簿記を学んだことがあるという人以外は、勘定科目という会計の専門用語に馴染みがないかもしれません。勘定科目とは、収入・支出の内容をおおざっぱにまとめた見出しをつけた箱だと思ってください。
PTAの会計では、日々の取引を記録・集計して収支計算書を作ることが目的です。収支計算書を使って今年度の収支実績の報告(予算との比較)を行います。収支報告では、「ボールペン代が1,300円で、消しゴムは500円で……」と細かく品目単位で説明することは一般的ではありません。通常は「消耗品として予算3万円に対し、実績も3万円でした」というように、取引の内容をまとめた単位で収支報告が行われます。
収支報告をしやすいように、取引を帳簿に記録する段階で「勘定科目」という見出し付きの箱に分類しておきます。
イメージをしやすいように、1枚のレシートから収支計算書までの流れを図にしてみました。
勘定科目は自分たちで決められる
勘定科目は収入・支出を入れる見出しをつけた箱ということはわかったかと思います。では勘定科目はどのように決めれば良いでしょうか?実は、PTAの収支会計には会計基準がないため、勘定科目は自分たちで自由に決められます*1。どんなモノでもOKですが、通常は「明瞭性の原則」と「継続性の原則」に従って勘定科目を決めています。
- 明瞭性の原則:わかりやすい会計を心がけましょう、という原則です。日々の仕訳から会計報告資料まで、読み手が理解できるようにフォームや勘定科目名を決める必要があります。
- 継続性の原則:一度採用した方針は特段の理由がない限り変えずに使い続けましょう、という原則です。勘定科目の名称や、どの支出がどの勘定科目に分類されるのかなど、過去からの処理を継続して行う必要があります*2。
わかりやすい勘定科目名をつけましょう(明瞭性の原則に関する補足)
経理初心者の方は「わかりやすい名前の勘定科目って何?」って感じかもしれません。そう言われると、確かに「わかりやすい」というのは難しいです*3。個人的には、「わかりやすい=自団体のPTA会員にわかってもらえる」くらいなイメージです。そのくらい曖昧なものです。
例えば「メイン収入」と書かれているとちょっと何言ってるかわからない感じですが、「会費収入」と書いてあれば、会員から集めた会費なのねと理解できます。
「文房具費」と「消耗品費」が分かれていれば、結構細かく分けているなと(私は)感じます。一方で「文房具費」のような勘定科目がなくて「消耗品費」だけの場合には、文房具類を買った支出は消耗品費に含まれているっぽいな、と(私は)考えます。
一度決めた勘定科目や処理方法は継続しましょう(継続性の原則に関する補足)
勘定科目や処理方法を継続するためにはルール化することが必要です。つまり、PTA規約や会計に関する内規(会計マニュアル等)において、勘定科目の名称、勘定科目に対応する支出の例を一覧にしておくべきです。規約内の会計に関する記述では勘定科目のみを列挙し、マニュアルで支出の例を書くのでも良いと思います。いくつか勘定科目を列挙しつつ一覧表の例を示しておきます。
収入/支出 | 勘定科目名 | 主な用途/内容 |
収入 | 前年度繰越金 | 前年度から繰り越された資金。前年度の収支計算書の「次年度繰越金」。 |
収入 | 会費収入 | PTA会員からの年会費。 |
収入 | 寄付金収入 | 会員・会員以外から提供を受けた金品。 |
収入 | 助成金収入 | 国・都道府県・市区町村から受けた助成金。 |
収入 | その他収入 | 上記以外の収入 |
支出 | 総会費 | 定時・臨時総会の開催に要した支出。 運営協力者への飲食物の提供、開催場所の使用料など。 |
支出 | 消耗品費 | 物品1点あたりの金額が1万円未満で、他の勘定科目に分類されない次の支出 文房具類、衛生用品、その他本会の運営に必要な物品 |
支出 | 本部会議費 | 本部で開催した会議に要した支出 |
支出 | 広報費 | 広報物の印刷製本に要した支出。 なお、通常購入するプリンターのインク代やコピー用紙代はここに含めず消耗品費とする。 |
支出 | 交通費 | PTA活動に伴い公共交通機関を利用した際の支出。 |
支出 | 通信費 | PTA本部で使用するモバイルWi-Fiに関する支出 |
支出 | 〇〇委員会活動費 | 特定の委員会活動に要する支出を集約したもの。〇〇には委員会の名称を付す。 |
支出 | 次年度繰越金 | 次年度に繰り越した資金。 |
* * *
今回の記事では「勘定科目」について解説しました。この記事に関するご質問・お問い合わせがございましたら、コメント欄かお問合せフォームよりご連絡いただけると嬉しいです。
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*1:誤解を招かないように補足すると、帳簿への記録(記帳)の段階では基本的に自由です。どのような名称でも構いません。ただ、決算書(会社法の計算書類、有価証券報告書の財務諸表、法人税申告書に添付する決算書、など)の作成段階では、法令規則に従って科目名を付します。多くの会社では最終的に作成する決算書に合わせて、日々仕訳に使う勘定科目の名称を決めていると思います。
*2:新しい収入・支出があった場合には、今決めることが将来に影響します。将来の影響も考えて決めるというのは意外と難しいことがあります。
*3:いや本当に、勘定科目って難しいですよね。会計士としてそれなりにやってくると色々な経理実務に触れ、決算書を読むので何となく勘所はわかっているつもりです。でもそれって私個人の感覚(会計士という職業団体の感覚)なんですよね。会計に慣れていない方向けに記事を書くときは、自分が大学1年性で右も左も(貸借も)わからず簿記3級を勉強していた時を思い出すようにしています。