今年度からPTAの会計担当者となったものの、
会計なんて( ^▽^)ワカンナーイ♪
という人は少なくないと思います。会社で経理をやっているとか、学生の頃部活やサークルで会計担当だったとかでもない限り、会計のお仕事に触れる機会はそう多くありません。
いざ前年度の会計担当者から引き継ぎをしてみたものの、わからないことのオンパレードだと思います。
- そもそも収支会計って何?
- 会計のルールって法律で決まっているの?
- 年度末に収支計算書を作るらしいけど、なんじゃそりゃ?
今回の記事では、これらの疑問に答えていきたいと思います。はじめにざっくりとまとめておきましょう。
収支会計とは収入・支出を帳簿に記録する方法です。要するに「おこづかい帳」です。おこづかい帳だと、誰からいくらもらったか(今月のおこづかい 1,000円)とか、何のためにいくら使ったか(ポケモンカード 500円)を記録しますよね。これをPTA版にちょっとアレンジする感じです。
収支会計のルールはPTA規約に従います。一般的な会社であれば企業会計基準や法人税法等をもとに会計を行いますが、PTAの会計ルールは法律で決まっていません。各PTA団体が、自身のPTA規約においてルールを定め、そのルールに基づき会計を行います。
収支会計は収支計算書を作成するために行います。PTAでは日々の入出金を記録し、最終的に1年間の収支がどのようになったのかを定期総会などで報告する必要があります。総会では作成した収支計算書(決算報告書)の内容を会員に報告し、承認を得る必要があります。
大まかな内容をおさえたところで、それぞれ詳しくみていきましょう。
収支会計とは収入・支出を帳簿に記録する方法である
収支会計の「収支」とは「収入」と「支出」のことを指しています。つまり収入・支出に限定した会計の方法だよ、ということです。収入と支出だけを記録するというと、多くの人に馴染みがあるのは「おこづかい帳」ですね。
おこづかい帳を書いたある人の99%は「書き始めた回数=1年持たずに挫折した回数」となっていると思いますが*2、PTAの会計は挫折しないでください。もし会計担当者が諦めてしまうと色々と困ってしまいます。
- 資金の残高がわからなくなる➡︎横領し放題
- 支出のチェックが行われない➡︎不正に使いたい放題
- 収支計算書が作れない➡︎決算報告ができないことでPTA自体が信頼を失って翌年度の会費が集められない➡︎PTAが活動できなくなる*3
それでは、実際にどんな帳簿を使えば良いでしょうか?収支会計では、収入(資金が増えた)と支出(資金が減った)だけを記録するため、ノート、Excelなどの表計算ソフト、Webアプリなどなど、どの方法でもOKです。それぞれのメリット、デメリットを比べてみましょう。
- ノート
- メリット:安い。PCスキルもスマホも不要。誰でもできる。
- デメリット:集計は人手でしないといけないので手間がかかる。ノートがないと作業できない。
- Excelなどの表計算ソフト
- メリット:集計が簡単。計算間違いがない。Google Driveなどで共有すればどこでも作業ができる。
- デメリット:スマホだと使いにくい。Excelだとお金を払っていないと読み取りだけ(編集ができない)になってしまう。PCを使えない人だとメンテナンスが大変(勘定科目が増えたり減ったりしたときに対応できない)
- Webアプリ
- メリット:集計が不要(プログラムが組まれている)。どこでも作業ができる。PCでもスマホでも作業ができる。
- デメリット:アプリで決められた様式でしか決算報告書を出力できない(カスタマイズしにくい or できない)、突然サービスが終了する可能性がある。
どれも一長一短あります。どの方法を使うかは各団体で苦心しているのが現状だと思います。「誰でもできる」を売りにするのであれば紙のノートになるでしょう。ただ集計は面倒です。Excelは便利ですが、やる気のある人が複雑にしてしまうと後の人が困ってしまう、というのはPTAに限らずよくある話です*4。
せっかくなので、PTAの収支会計で使えるツールを紹介したいと思います。
まず紙のノートやExcelを使う方は、国税庁が公表している白色申告用の帳簿の様式例が参考になります。白色申告の帳簿の付け方は収支会計とかなり近いので、こちらの様式例を使ってみてください。Excel版も公表してほしいところです。勘定科目の名前は変更する必要があります(売上➡︎会費収入、など)。
Webアプリは無料のものを使うのが良いと思います。例えばちまたの会計というソフトは収支計算用の無料Webアプリです。
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でかい文字ですみません。無料で使える収支会計システムです。入力・選択箇所を少なくして、シンプル&簡単に使えるものを作ってみました。仕訳入力をすれば、月次収支と収支計算書は自動で集計・作成されます。
CSVで出力する機能もありますので、収支計算書の見た目にこだわりたいという方は、集計結果をCSV出力してご利用ください。
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さて、宣伝も済んだことですし、次に会計のルールについてみていきましょう。
収支会計のルールはPTA規約に従います。
会社で経理業務をしていて真面目に取り組んでいる人であれば、企業会計基準等の会計ルールに詳しいと思います。「私の枕は会計監査六法です」という人も1万人に1人くらいはいるかもしれません。
NPOで働いている人であればNPO会計基準がありますし、学校法人は学校法人会計基準、医療法人は医療法人会計基準、労働組合にも労働組合会計基準があります。
しかし、PTAにPTA会計基準はありません。このままではどのように会計を行えば良いかわかりません。ここまで収支会計のお話をしてきましたが、そもそも収支だけで良いのか、それとも会社のように複式簿記で資産・負債・純資産・収益・費用の記録が必要なのか、などなど根本的な問題が生じてしまいます。
ではどうすれば良いでしょうか?PTA規約に会計のルールを明記すれば良いのです。規約に「会計」などの章を設け、「収支会計で行う」、「会計期間終了後○ヶ月以内に収支計算書を作成する」といったことを明記すればOKです。ご自身の所属するPTAの規約を見てみましょう。書いてあります・・・よね?万が一なければ規約をアップデートするべきです。こちらを参考に、早急に対応しましょう。
会計ルールは規約で明記すれば良いということがわかったところで、ではどこまで詳しく書くか?という疑問が生じます。ここはちょっと難しいところです。会計的に細かいことを言うと、「収支計算書には何を記載するか*5」とか、「『資金』とは何か*6」といった哲学チックなことまで定義・記載することが考えられます。・・・が、そんなことは誰も求めていないでしょう。(上記の全P連の例示でも)概要だけを記載し、細かいことは過去からの慣習とか、誰でも納得するような一般的なルールに従うことを暗黙の了解とすることが多いと思います。
会計担当者になったからには、一度は規約をチェックしておきましょう!
収支会計は収支計算書を作るために行います
ここまでに次の2点を学びました。
- 収支会計とは、おこづかい帳のように収入・支出を帳簿に記録する方法である。
- 収支会計のルールはPTA規約で決める。
さて、決めたルールでおこづかい帳に記録して終わりでしょうか?もちろん違います。PTAで会計を行う目的は、もらった会費をどのように使ったかを予算と比較して、1年間の収支の結果を収支計算書にわかりやすく集計して会員に報告することです。決算報告を行うために収支計算書を作らなければなりません。
話を簡単にするために、おこづかい帳に戻ってみましょう。おこづかい帳であれば、こんな感じで1年間のもらったお金と払ったお金の合計がわかれば十分だと思います。
PTAもこれで良いでしょうか?試しに作ってみたので見てください。
・・・待てい!!ってなりません?百歩譲って、全部の入出金がわかるのは良いかもしれません。合計ではとりあえず収支がプラス(60万ー58万=2万のプラス)というのもわかります。それでもツッコミどころは色々とあります。
- 個別の入出金額はわかるけど、特定のイベントや、委員会・分科会ごとにいくらかかったかわからない。まとまった金額に集計できない。
- 収入・支出の合計では収支がプラスになっているけれど、その内訳を理解するのが難しい。
- そもそも年度初めに決めた予算はどうなった?
先ほど書いたPTAで会計を行う目的を確認してみましょう。大事なところは太文字にしています。
PTAで会計を行う目的は、もらった会費をどのように使ったかを予算と比較して、1年間の収支の結果を収支計算書にわかりやすく集計して会員に報告することです。
PTAの活動は予算をもとに行われます。そのため、収支計算書では予算に対して実績がどの程度だったか(予算を超えた、ピッタリだった、下回った)を数値で報告する必要があります。必要に応じて予算と実績の差額の説明を記載することもあります。
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また、収支計算書はわかりやすく集計することが必要です。収入合計・支出合計だけでは不足でしょう。一般的には、収入・支出の内容を「勘定科目」としてあらかじめ決めておき、帳簿には「勘定科目」を使って記録します。勘定科目の例としては以下のようなものがあります。
- 収入:前年度繰越金、会費収入、寄付金収入、その他収入
- 支出:管理費*7、活動費*8、次年度繰越金
- 管理費の内訳:人件費、総会費、本部什器備品、本部消耗品費・・・など
- 活動費の内訳:〇〇委員会活動費、卒業記念品代、入学記念品代・・・など*9
このくらいの区分は必要だと思います。さらに細かく、例えば本部消耗品費を「プリンター代、ボールペン代、印刷用紙代・・・」とすることも考えられますが、あまりに細かくすると勘定科目を選ぶのも(覚えるのも)大変なので、内容がわかる程度のおおまかなくくりとしていることが多いと思います。
それでは収支計算書の例をみてみましょう。どんな収入・支出があったか、予算と実績の差額はいくらでどんな理由だったか、といったことがわかりやすくまとまっていると思います*10。
収支会計はこの収支計算書を作成するために行います。自分の仕事がどのような結果としてまとめられるのかをイメージすることで、慣れない会計業務も進めやすくなる・・・ことを願っています。
* * *
今回の記事では「収支会計とは何か」「収支会計のルール」「収支会計の目的(収支計算書を作ること)」、について解説しました。この記事に関するご質問・お問い合わせがございましたら、コメント欄かお問合せフォームよりご連絡いただけると嬉しいです。
*1:フォントは「えり字」を使用しています:http://v7.mine.nu/pysco/gallery/font/06.html
*2:もちろん私もその1人です。子どもの頃おこづかい帳の記録を挫折しても会計士になれます!
*3:アンチPTAだからといって、PTA活動を終了させるために会計業務を放り投げることはおやめください。不正支出や横領などが発生すると警察沙汰になります。
*4:「仕訳ページをpivot集計するだけなら簡単だろう」というのはExcelができる人の考え方です。vlookupとか、sumifとか、ましてやindex + matchなんて使ってしまったら、Excel大好き人間か仕事で1日8時間Excelと睨めっこしている人じゃないとわからないと思った方が良いです。
*5:収入と支出を分ける、支出は管理費と運営費で分ける、さらに運営費は委員会ごとに・・・など、具体的な記載内容を細かく規約に書いておくことが考えられます。
*6:「資金=現金預金」というのが一般的かと思いますが、資金の範囲は拡張可能です。例えば、未収入金や未払金を含めることで、未収となっている収入(徴収できなかった会費)やまだ払っていない支出(3月に使ったプリンターインク代が次年度となる4月に引き落としされる)を収支に含めることができます。
*7:PTA組織全体を管理するための支出。本部の経費。
*8:イベント、行事などの活動に関する支出。
*9:管理費、運営費の区分は人により考えの違うところだと思います。ここで例にあげた記念品代などは、PTA全体の支出として管理費に区分する場合もあるかもしれませんが間違いではありません。
*10:わかりやすい or わかりにくいは個人差が大きいので、もしこれでわかりにくければ、自分のわかりやすい収支計算書を考えてみましょう!