「難しい」ことを「簡単な」ことに翻訳してもらい、それでわかった気になっていないだろうか?翻訳の過程で削ぎ落とされた情報を、妄想力を使って探し出そう。そうして、「難しい」ことの本質を見極めよう!
「難しい」ってなんだろう?人それぞれ、いろんな「難しい」があると思います。今日はそんな「難しい」について、考えてみようと思います。
唐突な疑問ですが、「難しい」ってなんでしょうか?
- 数式を解けない
- 前提知識がないから文章の意味がわからない
- 今はまだない考え方だから、自分の中で咀嚼できない
私は、数学が苦手なので、数式を見ると「難しい」と感じます。一方で、難解な会計基準は、前提知識をしっかりと持っているため理解することができ、難しいとは感じません。
社会問題はどうでしょうか?
私は東芝問題の奥の深さは理解できますが、原発問題はどれだけまずい問題なのか(はたまた問題がないのか)理解できません。
いつもは聞き流している情報でも、少し自分で考えようと思ったり、他人に説明しようとしたり、そういうふとした瞬間に「これって実は難しいなぁ……」と感じる経験は誰にでもあると思います。
今日は、そんな「難しいこと」について考えてみます。なお、数式を解くことの難しさについてはちょっと脇に置いておき、何か社会的な出来事について意見を述べるときなどの「難しい」を対象とします*1。
「難しい」の正体は思考経路の複雑さだ。結論は個人の意見を述べるだけであり、直感でも済ませられる。しかし、結論に辿りつくための思考経路は簡単には構築できない。
(神話)
「彼は、難しいことを誰にでもわかるように説明する。優秀だ!」
「彼は、難しいことを難しい言葉のままで説明する。バカだ!」
上の2つの言葉は、良く聞く話です。少し考えてみてください。これって本当でしょうか?
正しい、正しくないの結論を出す必要はありません。こんなお題を出していてなんですが、結論はどっちでも良いのです。自分の意見としてYES or NOの答えを求められているのであれば、どちらを選ぼうと、その人にとって正解だったらそれで良いんです。
じゃあ何が大事なのか?大事なことは、答えにたどり着くまでの過程(思考経路)です。そして、この思考経路が「難しい」の正体であるのだと考えています。
思考経路には、一般論の他に個人で固有の知識や経験が含まれます。これは他人からはわからないものです。自分では単純だと思っている考えでも、他人からすれば、知識・経験が共有できていないことから、複雑に見えてしまい「難しい」と感じるのです。
「難しい」ことを簡単に説明できる人は、すごい。だけれども、[難しい]→[簡単]への変換過程で、何か大事なことが削ぎ落とされているんじゃないだろうか?
世の中には、そんな「難しい」ことを簡単に説明してくれる人がいます。その人たちの説明では、私たちに不足している前提知識や経験を付け加えてくれます。それに助けられて、「難しい」ことが「簡単な」ことになり、理解ができるようになるのです。
一方で、前提知識や経験を持っているだけでは理解できないようなことは、説明の中から削ぎ落とされている可能性があるということに気をつけなければなりません。もしそれが思考経路の中でも大事なことであれば、私たちの理解は「わかったつもり」に過ぎないのです。
「難しい」を「簡単な」ことに変換する過程で削ぎ落とされた情報は、以下の理由から簡単には見抜けません。はたして、削ぎ落とされた情報は闇に葬られておしまいで良いのでしょうか?
- 「簡単に」なった段階で納得し、そこから思考を進めようとしない
- そもそもの「難しい」状態の思考経路を完全に理解している人はいない
「難しい」の正体である思考経路を、自分で組み立ててみよう!「簡単な」説明に惑わされてはいけない。
「簡単な」説明で削ぎ落とされた情報をどうやったら探すには、自分で「難しい」思考経路を再現する必要があります。もちろん、0から100まで正確に再現することは不可能でしょう。それでも、間に削ぎ落とされた26とか、68とかのパーツを見つける手立てにはなるはずです。
この時に必要となる力は、結論から事象(前提知識、経験、起こったこと)を推測する力です。他人から見たら、もしかしたら妄想と捉えられるかもしれません。 妄想というとあまり良いイメージはありませんが、自分が見聞きしていない事象を推測するためには、妄想を膨らませるのが一番です。
妄想を膨らませるためにはどうしたらいいでしょうか?私は、日常の体験はもちろんのこと、読書が妄想力の重要な土台だと考えています。小説を読んだ時の疑似体験や、教養書を読んで得た知識が、妄想をするための大事な基礎になるのです。本、読みましょう*2。
今日は、「理解する」ということに焦点を置いた書籍を紹介。難しいことを簡単に説明してくれる本、新たな難題を突きつけてくる本、とにかく難しい本。あなたの好みはどれだろうか?
知らないと恥をかく世界の大問題 (6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか? (角川新書)
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川マガジンズ
- 発売日: 2015/05/10
- メディア: 新書
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簡単に説明してくれる人でおなじみの池上彰さんの本です。本屋でも目につくところに並んでいるので、おなじみですね。過去作*3の出版年月を見てみると、2〜6までは、年1冊ペースで、3月〜5月に発売されています。今年も新作は出るのでしょうか?楽しみです。
これは物理の本です。こんなことしたら一体どうなっちゃうの?という疑問に、物理学の観点から解説がなされています。ジョークが豊富で面白いのですが、いかんせん日本人にはわからない冗談が豊富。難しい物理の問題を簡単に説明してくれているのだけれど、ちょっぴりジョークが難しい。ジョークを難しいまま理解できるか試してみよう。
手元にある中で、難しい本はどれだろう……と探してみたら、ありました。リトルトンの「会計発達史」です。アマゾンリンク先では中古品しかありませんね。東京駅の丸善には新品があったような……(1階の会計関係の本が並んでいる棚の一番上!)。大学生の時に読んだけれども、理解が追いつきませんでした。会計学、技術としての簿記をの歴史を理解したい人は必見だと思います。
これで一旦、「難しい」について考えることはお休みです。
さて、この記事で削ぎ落とされた思考経路は何でしょうか……?