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暇な公認会計士が、監査や身近な会計、その他自由に意見を述べています。

『残業税』から学ぶ、幸せのトレードオフ。

 みなさんの月の残業時間はどのくらいでしょうか?パート・アルバイトだったら、0時間に近かな?正社員だったら、仕事内容にもよるでしょうけど、10時間、20時間、多い人なら50時間超。死にそうなくらい働いている人はら100時間〜200時間でしょうか。派遣の人は……聞くのが憚られます。

 そんな残業だらけの世の中ですが、どこかのブログで紹介されていた『残業税』を読みました。「残業税って何?」という方のために、本書でいる「残業税(時間外労働税)」の定義を、まずは紹介しましょう。

労働基準法では、1日8時間または1週間40時間を法定労働時間と定めており、これを超える労働については割増賃金を払わなければならない。この割増された賃金の2割が、時間外労働税として、労使折半で国に納められる。

つまり、法定外の残業を1時間して、2,500円の賃金を得たとすると、労働者は250円の残業税を天引きされ、使用者は天引き分を含めて500円を納税する。

月換算の残業時間が増えるごとに、税率はアップする。40時間を越えると、超えた分は4割、過労死ラインの80時間に達すると、以降は実に8割だ。つまり、残業時間が増えると、労働者の手取りは減り、企業の負担は増える。

  「残業」であるため、納付をしなければ脱税になります。サービス残業でも納付義務が生じるため、サービス残業をさせているような会社は、通常脱税行為をしていることになります*1

 本書の主人公はマルザ*2の矢島。会社・事業所が、あの手この手で行う残業隠し(残業税の脱税)を、相方である労働基準監督官の西川などと協力して取り締まり、違法残業を正すことを目的としています。

 

 本書で面白いなぁと感じたのは、サービス残業が発生する原因です。みなさんは、どんな時にサービス残業が生じると思いますか?

  • 悪徳経営者が、無理強いをする。
  • 無駄に怖い上司の恐怖政治が蔓延し、部下が渋々長時間労働をする。
  • 人が少なくて、業務量が多すぎる。
  • 自分への評価を下げられたくない。頑張っている雰囲気を出したい。
  • 周りの空気に流されて、なんとなく。

 現実的では、こういったことが多いのではないでしょうか。後ろ向きというか、消極的というか、そういった理由が多いのではないでしょうか。一方で、本書で出てくる従業員は、そうではありません。いくつか、彼らの声を引用してみましょう。

「ふざけんなよ!何だよ、これ。こんなことされたら、店がつぶれるだろ。昼も夜も一生懸命働いてきたのがパーじゃねえか。頑張って働いたら、店を任せてくれるはずだったのに、独立できるはずだったのに!」(p58)

「おれたちは、いい仕事をしたいだけなんだ。どんな無理な注文も乗りこえて、納期までにソフトを仕上げるのがプロの仕事だろ。客はぎりぎりまで文句を言ってくるんだから、どうやったって最後は残業しないと終わらなくなる。残業がかかるからって、そこでいきなり派遣社員に任せられるか?」

「あんただってそうだろ。手をつけた仕事は最後までやりたいんだよ。自分たちで作ったソフトは子供みたいなものだ。それを他人に任せられるかって言ってるんだ」(p114-115)

  皆、自分の夢だったり、目標だったり、仕事への忠誠から、積極的に残業をしているのです。経営者は、それを承知した上で、事業継続のために脱税をする。矢島は、どんな事情があろうと法律違反であるから摘発する。

 

 ざっくり言うと、「とあるマルザの脱税摘発(タックス・ウォーズ)」です*3

 

 こうした状況を思い浮かべていると、ふとしたはずみに幸せのトレードオフについて想いを馳せていました。本書の内容と全く関係ないですが、本の紹介ついでにお付き合いください。

 

 一日の時間は限られていて、かつ、いつかは必ず死ぬことを考えると、時間は有限です。何にどれだけの時間を向けるか、何の時間を削るかというのは、常にトレードオフになります。そして、仕事での幸せを追求するか、それとも家庭や私生活での幸せを追求するかという点も、多くの人にとってトレードオフの関係にあるあるのではないでしょうか。

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 上記の図は、多くの人がどこかで見たことのある図ではないでしょうか。中学や高校の政治経済の授業、大学の経済学や経営学、もしかしたら会社の研修かもしれません。Y軸(仕事)を高めるとX軸(家庭・私生活)は低くなり、X軸を高めるとY軸は低くなる。中間(妥協点)を取ろうとすると、XもYも中途半端になる。このトレードオフの図を、私は妥協のトレードオフと勝手に名付けました。両極端か中途半端しか選べない、それは妥協だと思います。

 

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 さて、次の図を見てください。こちらの図は、妥協のトレードオフの曲線を上に凸としたものです。こちらはどうでしょうか。同じように、トレードオフ関係は残っています。しかし、中間点が、かなり上の方に移動しています。これくらい両者を高めているのであれば、それはもう妥協ではないと思います。

 私は、すべての時短戦士*4が目指すべき輝く星を持つこの曲線を、戦士のトレードオフと勝手に名付けました。

戦士のトレードオフこそ、時短戦士が目指すべき幸せのトレードオフです。

 まずは、自分の中のトレードオフ曲線を、戦士のトレードオフに変化させる視点の変化が必要なんだと思います。

 

 といったことを、まさかこの本を読んで思い至るとは思いもしませんでした。すべての時短戦士に、この本をオススメしたいと思います。

 

残業税

*1:サービス残業をさせる一方で、税金だけをきちんと払うような会社・事業所はないと仮定しています

*2:正式名称:時間外労働税調査官

*3:そのまんまやんかー!!

*4:

 

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