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暇な公認会計士が、監査や身近な会計、その他自由に意見を述べています。

虐待を疑われたときの、児相との付き合い方とか。

ある日、児相はやってくる。


この間、警察から児童相談所(通称:児相)への児童虐待の通告件数が、26年連続で増加しているというニュースを見た。

 

こういうニュースを見ている多くの家庭は、「うちは関係ない」と思っているだろうし、我が家もそう思っていた。

 

けれども、ある日我が家に児相はやってきた虐待の疑いで

 

そして、子供は一時保護され、乳児院に入れられることが決定した。

表現が適切かはわからないけど、幸運なことに、乳児院に移される前に、虐待の要因となった子供の身体的症状が突発性の病気ということが判明し、乳児院行きはなくなり、退院とともに一時保護は解除された。

 

せっかくなので、不幸にも虐待を疑われる立場となってしまった人のために、いくつか経験上有益だと思うことを書いておこうと思う*1

 

記事を読む上では、次のことを前提としたい:

  • 虐待をした事実はない。
  • 虐待をしていないのに子供の体に虐待の症状が出ている。病気かどうかは医者でもすぐにはわからない。
  • 一時保護の制度内容や、民法・児童福祉関係法規の法律知識は全くないものとする。
  • 子供は幼稚園に入る前くらいで、まだ自分の意思を言葉ではっきりと伝えられないくらい。

 

児相のスタンスは「疑わしきは保護」


「疑わしきは罰せず」という表現を聞いたことがある人は多いかもしれない。刑事裁判ではこれが原則となる。一方、児相のスタンスはこれと正反対で、「疑わしきは保護」なのだ。これは我が家に児相の職員が最初に来たときに、その職員から伝えられたし、病院の医師からも伝えられたような記憶がある。

このスタンスを知っておくことは、児相職員と話をするときにとても役にたつ。目線をそろえることで、「何かわからないけど、自分に疑わしいところがあるんだな、どこだろう?」 と冷静に考えることができる、と思う。少なくとも、「疑わしいだけで一時保護するなんて異常だ!!」という思考からは抜け出せると思う。

 

疑う根拠はなんなのか?


「疑わしきは保護」というからには、疑うに値する何かがあるはずだ。児相職員と話を進めて行くと、虐待を疑われた理由が内ももの痣(のような痕)にあるということが児相職員から伝えられた。通常、子供の痣は、どこかにぶつけやすい体の外側にある部位に出ることが通常で、内ももや、腕の内側などに出る痣は、通常の怪我とは違う、何らかの干渉があって引き起こされた痣だと疑うようだ。

日本小児科学会が出している子供虐待の手引き(第2版)にわかりやすい図があったので、これを引用しておく。

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誰が児相に通報したのか?


子供が普通に元気に暮らしている家庭に、児相が来ることはまずないと思う*2。そういう普通の家庭に児相が来るときは、どこからか児相に通報があったときだ。

我が家の場合は、病院から児相に通報された。前述の通り内ももに痣があったことに加えて、その痣が何らかの病気であるということが確定できなかった、つまり病気なのか、病気じゃないのかわからなかった結果、虐待の疑いがあるとして通報された。

ここで覚えておかなくてはならないことは、私たち個人のレベルでも、児童虐待の疑いを持ったら、市町村や児相に通報しなければならないということだ。これは厚労省のHPで明記されている。

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児童虐待の現場を見たら、ではない児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には通報しなくてはならない。そういう意味では、我が家の場合は病院が児相に通報したのは、病院がその機能を果たした結果だと思っている。

 

虐待を疑われるのが怖くて病院に連れて行けなくなった。


我が家ではそんなことはないのだけれど、この記事を見ている人の中には、虐待を疑われるのが怖くて病院に行きにくくなったと思う人もいるかもしれないけれど、虐待をしていないのであれば、堂々と病院で事実を説明して診断を受けるべきだと思う。子供を病院に連れて行かないと育児放棄を疑われるかもしれないし、何よりも本当に病気だった場合に取り返しのつかないことになる。

個人的には、何か起こったときに、真っ先に虐待を疑われるような環境を作らないことが大事だと思う。そのためには次の2点が最低限必要だ:

  1. ご近所さんから、「この家族はまぁ普通だな」と評価してもらえるような環境を作る
  2. かかりつけの病院を1つか2つ決めておいて、何かあったらまずそこに行く

ちなみに、我が家では1はできていたと思う*3が、2が疎かだった。子供の痣が出たときに、いつものかかりつけの病院ではなく、行ったことのない皮膚科の病院に連れて行ってしまい、そこから大きい病院の紹介を受けた際に、「アビュース(虐待)の疑いあり」と伝えられてしまった。もちろんかかりつけの病院に連れて行っても同じ結果になる可能性は否定できないけど、違う結果になったんじゃないかと個人的には思っている。

そういえば、児相職員と何度か話しているときに、「子供の泣き声で通報されるような事例もある」と聞いた。こういう人は、いわゆるご近所付き合いがきちんとできてないんだと思う。コニュニケーションが苦手だったり、そもそも愛想がないとか色々難しいことはあるのかもしれない。けれど、そこは親として、何かあったときに即通報されないように、保険として、無理矢理にでも軽く笑顔でご近所さんに挨拶する程度の余裕があった方がいいと思う。

 

一時保護中は親権が停止される?


最後に、一時保護中に最も頭を使って調べたことを書いておこうと思う*4

子供が一時保護されたことに当然納得できなかった私は、病院がどのように判断を下したのかを知るためにカルテの開示請求をしようと考えた。何度か病院の医師と話す中で、何とか科の副診療部長という偉そうな人から、「一時保護中は親権が停止されていて、カルテの開示請求はできない」と明言された。

言われた瞬間は絶望したけれど、何となく納得できなかった。そこで、全く素人ながら、児童福祉六法ポケット六法、さらに民法IV 補訂版 親族・相続を使って必死に調べた*5。その結果、「一時保護されただけでは、親権は停止されない」(ついでに、その病院の制度上、カルテの開示請求ができる)という結論に至った。結論を病院にぶつけた結果、返ってきた答えは「カルテの開示請求できます」とのこと*6*7

児童福祉関係の法律はたくさんあるし、民法も当然絡んでくるので全部を把握するのは難しい(しする必要もない)けれど、要点をきちんと理解していないと簡単に騙されてしまう。いざというときに自分で理解できるようにしておくか、法律に詳しい知人を見つけておくのが有効だと思う。

ちなみに、一時保護中は入院代は全くかからなかった。そういう制度らしい*8

 

おわりに。


虐待をしていないのに疑われたときには、徹底的に戦った方が良い。自分の経験から、「虐待をした事実は見つからないけれど、疑わしい状態」であれば、一時保護もされるし、乳児院等の施設に送られてしまうということがわかった。やっていないことは証明できないけれど、色々と状況証拠を自分でかき集めることは大事だと思う。

親権者として、一時保護の承諾書や、一時保護施設への入所時に求められる署名を拒否することはできるけど、拒否したのちに強制的に一時保護されてしまうと、長期間完全に子供に会えないリスクもあるいきなり児相が来て一時保護と言われると取り乱すかもしれないけど、なんとか冷静になってほしい。我が家の場合は児相職員とよく話し、署名も拒否しなかったおかげか、入院中の面談は一切制限がなかった。乳児院の場所は教えてもらえないことがあるらしいが、我が家では教えてもらえた。家からそう遠くないところにしてもらえた。結果として入らなかったけど。

子供と過ごすと色んなトラブルに巻き込まれるけれど、それを含めて親としての貴重な経験なんだと思う。子供が大きくなったとき、子供に子供ができたときに、「あんたはあのときねぇ……。」という話をしてあげることが、いま子育てをしている意味の一つなんだろう。将来のネタのために、子供と過ごす時間を大事にしたいと思う。

*1:以前、だいぶ詳しく書いたのだけれど、その記事は非公開にしてしまった。

*2:地域によって、児相が全家庭訪問をしているようなところがあるのかは知らないが。

*3:ご近所さんとは挨拶もするし、出勤前とか休日に合えばお喋りもしたし、普通のご近所付き合いができていたと思う。

*4:ちなみに、2番目に必死に調べたことは、パートナーと離婚した場合に子供の一時保護を即解除して自分が引き取ることが可能かどうか、ということ。こっちは時間をかけて調べたけど、結果として使うことはなく、良かったと思う。通勤電車で血眼で「民法Ⅳ」の離婚っぽい記述にアンダーライン引きまくっている様子は、われながら完全に異常者だったと思う。

*5:火事場の馬鹿力というべきか、数時間で必要箇所を読み漁って結論までたどり着けた。

*6:誤情報を伝えたことに関する謝罪は特になかった。ちなみに副診療部長とはそれ以降今日まで会っていない。

*7:カルテには読みたくないことも書いてある。親観察日記とでも言うべきか。読むときは心して読んだ方が良い。病院にいるときは、常に見られていると思った方が良い。

*8:我が家の場合は健康保険組合から問い合わせが来た。病名を書いて、「詳細は担当医療機関にお問い合わせください」と回答したら、特に追加の問い合わせはなかった。